基地「負担」→米では「影響impact」 表現変え、沖縄の実態隠す

琉球新報 2010年8月9日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-166077-storytopic-53.html

 米国で基地問題の取材を重ねるうちに、ある日本語が英語では別の表現になっていることに気付いた。米軍基地から派生する騒音や犯罪などの被害を、日本では「負担」と呼ぶ。直訳すれば「Burden」だが、米政府の会見などではほとんど聞かれない。代わりによく耳にするのは「Impact(影響)」だ。


 基地負担ではなく基地の影響。

ここに、
自国の軍隊の駐留が、他国の重荷になっていると認めたくない米国の心理的抵抗を感じる。だが日米が共同発表する公式文書では、どちらを使うのだろうか。


 今年1月19日に発表された、日米安保条約改定署名50周年の共同声明を確認した。日本語版は「基地の『負担』を軽減する」とあった。ところが英語版では「基地の『影響』を軽減する」になっていた。
 5月28日発表の、米軍普天間飛行場辺野古移設を明記した共同声明も確認した。英語版に「影響」とあった。「やはり」と思いながら読み続けると、中段で「負担」と出てきた。「あれ、両方使っている。単語に過敏になっていただけだろうか」と気になり、日米関係筋に確認した。すると、面白い答えが返ってきた。


 「文章をよく読むといい。
『基地負担に耐えているという沖縄の懸念に応える』と表現してある。
あくまで沖縄側の言葉として使っている。政府自身の言葉ではない」。


聞けば、
今年に入って米政府内で、「影響」に統一する方針が出されたという。

 基地から被るのは「負担」か「影響」か。単語だけをみれば、わずかなニュアンスの差かもしれない。
だが騒音や危険性、事件事故を単なる基地の作用ととらえられては、周辺住民の感覚とあまりに大きな溝がある。
実態を言葉で覆い隠そうとする姿勢にこそ、負担軽減が進まない要因がある。