中南米移民のデモとストライキ


彼らの抗議の対象は「不法移民の取り締まり強化」の法律に対するものであるようだ。日ごろのうっぷんが吹き出した感じで、いったい何を抗議したいのか整理つかない部分もあるが、要はそういうことだそうだ。
この法律が決まれば不法移民は捕まって処置されることは勿論、不法移民の雇い主も罰金を払わされる。この度はデモだけでなく、エスカレートしてストライキまで決行。移民なしではいかに困るかをアメリカ人に認識させようということで「移民がいなければ新鮮な野菜や肉などの食べ物もたべられないんだよ」と訴えていた。

メキシコ系の従業員が多く働くレストランや精肉工場、野菜農園、マーケットなどは休業した。メキシコ系アメリカ人の友人がいるが、彼が勤める会社もメキシコ系移民を使っているので、会社が休みになった。友人はのんびりと休みを楽しんでいたが、サンノゼで行われていたデモに参加する気はさらさらなく、もし会社が休みでなければ当然働いていたと言う。こうしてさめた目でデモとストライキを捉えるメキシコ系2世もいるわけだ。

中南米系の移民の人間関係は中に入ったら面倒なことが多いようだ。
中南米といっても、出身国それぞれ性格が違う。アルゼンチンの移民はなにしろ自尊心が高く他の移民をみくだしているという噂がある。確かにアルゼンチン出身の移民はメキシコ系移民やアジア系移民(私も含めて)を見下した言葉を時々吐く。エル サルバドールの人はギャング団は別だが、おとなしいし、真面目だ。メキシコ人は「赤信号、みんなで渡ればこわくない」といったタイプが多い。そしてメキシコへの愛国心が強い。他の中南米人たちから嘘が多いと言われるのはペルー。一番皆から愛されているのはブラジルで確かに自由で陽気な人が多い。コスタリカの移民は少ない。軍備費をかけないで、教育、観光施設に予算を多く使い、国が安定しているからアメリカに働きにくる必要がないとエル サルバドールの人はうらやましそうに言っていた。

メキシコ人はスペイン、白系の血が入っていることを誇りたがるけど、ヨーロッパ系の移民が多いアルゼンチンからみると滑稽だとこき下ろす。アルゼンチン人がお高いと嫌われるのはこんな視点からかもしれない。アメリカに来たらまず人種差別をしないことを学ばないとまずいのはないかと心配になる。メキシコ人コミュニティーでは人々はかたまってお互いに寄りかかりながら生きているようだ。人が集まれば大きなメキシコの国旗を振って「メヒコ、メヒコ」とアピールする。

バランス感覚のある人々はメキシコ・コミュニティーとはつかず離れずの距離を保とうとしているようだ。アメリカ社会でマネジャーや、スーパーバイザーになった移民の1世、2世が他の中南米移民を使う側になると陰口、サボタージュなどの嫌がらせがあるそうだ。これは外からは見えない部分だが。

一般的にメキシコ移民は結婚が早い。女の子は13才でもうお化粧しているし、16才になったらもういっぱしのヤング レディー。子供ができて結婚して40才前に孫が出来るケースも多い。こうしてどんどん増える。夫も年が若いし、時間や、約束事はルーズだから仕事は変えるのが速い。生活保護を受ける。その親の生き方を見て育ち、親も社会生活の基本を教えないからその子供も親と同じような生き方をする。また生活保護。孫もそう。人口だけは確実に増える。

ただ、今回の問題点は「不法移民の取り締まり強化」にひっかかるのが不法移民の雇い主の他に、教会などチャリティーで無料の食事を提供する機関も対象となることである。この点で普通のアメリカ人もデモに加わる人が結構いるわけだ。

共和党は国境に塀は作らないと言っている。ゲスト ワーカーとして大量のメキシコ移民を受け入れているわけだし、これ以上はもう無理。不法入国者に長期滞在を促すような仕事の提供と、食事の提供を取り締まれば入って来ないであろうという目算。

中南米以外の不法入国者は法律をおかしているのだから、厳しい処置が取られている。牢屋にいれられ強制送還。中南米だけなぜ特別に見逃されるのか。不公平ではないかという意見は多い。しかし、教会等が食事を提供するのも取り締まるというのはちょっと行き過ぎではないか?
入ってきてしまった人々を餓死させるわけにはいかないだろうし、この点は条件付きでもいいから今回の法律からはずした方がいいのではないかと思うのだが。

それにしてもメキシコの政治家、資産家や企業家はなんと社会的責任感がないのだろう。メキシコの失業率は 2.8% (2003年1月)。自分の国に住む失業者に仕事を与える努力など考えず、海外投資で財テクに忙しいのか? 自分たちさえ贅沢ができればいいのであろうか? だいたい失業率は 2.8% というが、実態はもっと、もっと多いのでは..それほど大量の人々が毎日アメリカに入ってきている。失業者のために国の予算を削ることはない、アメリカに面倒を見させればいいではないか..と考えているとしか思えない。