電気料金=安定した収入を、関係各所で分け合う利権集団の“共存共栄”システム。それが原発産業

5月6日、菅直人首相は中部電力に対して、浜岡原子力発電所の停止を求め、中部電力も、運転中の2基と定期検査中の1基を止める決断をしました。これで、日本が「脱・原発」に大きく舵を切ったのだろうか?


週刊ダイヤモンド【11/05/21号】 2011年5月16日
http://diamond.jp/articles/-/12257
1基100年、知られざる巨大産業の裏側 原発の「カネ」「利権」「人脈」を大解剖! 

(上略)
・・・実際はそうではありません。菅首相は、「あくまで浜岡だけ」と協調しましたし、枝野幸男官房長官は「原発政策の基本は変わっていない」と語り、海外への原発輸出の旗振り役だった仙谷由人官房副長官も「政策としては原発を堅持する」と述べています。

 東京電力福島第1原子力発電所のあの大惨事を受けても、日本の原発政策は止まることはありません。それが現実です。
その理由は、原子力発電所という産業そのものが巨大な“システム”になっているところにあります。

 日本には商業炉として54基の原発があり、現在約20基が運転を続けていますが、その裾野は実に広大です。何しろ、用地選定から運転までに20年、そして運転は最長で60年間続きます。役目を終え廃炉にするのも、放射能の除染や核廃棄物の処理などで20年を要します。すべての過程で100年に及ぶ、恐ろしく息の長い産業なのです。

 当然、その間には膨大な人と企業、カネが絡みます。関わる企業や団体は500をくだらないでしょう。福島第1原発の事故では、東電の責任が大きく取り沙汰されていますが、東電とてこの大きなシステムの中の一事業者にすぎません。

 また、原発を誘致した自治体も、交付金や電気料金の割引措置、各種の助成金も付いて潤います。さらに、原発産業の推進に際してはもちろん政治家が介在し、行政と産業界を結ぶパイプ役として天下り官僚も跋扈しています。大学をはじめとする研究機関も、安全性を保証する国の代弁者として一役買います。

 国民が払う電気料金という非常に安定した収入を、100年の長きにわたり関係各所で分け合う“共存共栄”のシステム。それが原発産業なのです。この、強固につくり上げられた原発を巡る利権の構造は、易々と崩れるものではありません。

 世界最大の原発事故を受けても、日本の原発は止まらないし、止められない──。今週号では、そんな日本の原発の現実を、様々な角度から読み解きます。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)