政治の再生を図って 被災者の苦しみに報いよ

震災特別寄稿 日本の友人たちへ フランシス・フクヤマ氏からの手紙
http://www.47news.jp/47topics/earthquake/4.html

被災者の苦しみに報いよ フランシス・フクヤマ(米政治学者)


 著書「歴史の終わり」で知られる日系の米政治学フランシス・フクヤマさんが、日本は東日本大震災の被害との取り組みを通じ、政治の再生を図れと訴える一文を寄せた。政治再生を実現することこそ、被災者の苦しみに報いる道だという。

  • 新たな政治生まれ出よ 危機通じ国家目標意識を

(上略)
 大変な状況なのにもかかわらず、日本人は気高い精神を持ち、実に冷静にこの悲劇に立ち向かっている。こんな風に悲劇を受け止めることのできる社会は他にないだろうと思う。
(中略)
 今回の国家的悲劇が新たな日本政治の契機となることを、私は期待する。近年の日本は、ライバル相手に目先の得点稼ぎばかりに専念する政治家たちの内輪争いに困らされてきた。政治家たちは真剣に力を合わせ、深刻な長期的な課題を解決しようとしてこなかった。そうした点では、米国の政治家と行動が似通っていた。米国の政治家も党派対立ばかりで、国家の長期的問題への取り組みをおろそかにしてきた。(中略)

...日本に必要で欠けているのは、つまらない抗争などにかまけず、国家経済の長期的な健全化を図るために必要な自己犠牲へと国民を引っ張っていける政治指導だ。

 いつも通りやっていればなんとかなるという慢心から人を目覚めさせるには、時として厳しい精神的苦痛が必要となる。
それが人間の性だというのは残念ながら事実である。
津波被害への短期的な取り組みで人々の粘り強さが試される。
そこを通じ、しっかりとした国家目標意識が生まれ、その意識が当面の危機を越えて続いていくことになるかもしれない。
そうなれば、この大災害の被災者らの苦しみも、いくぶんかは報われることになろう。(共同通信
フランシス・フクヤマ氏からの手紙 http://www.47news.jp/47topics/earthquake/4.html