なんとなく哀しい、ものがなしいはどこからくるのか?
myrtus77さんと話し始めた「ものがなしい」という言葉について少し考えてみました。
日本には「もの悲しい」と言う言葉がある。他国に、このような言葉はあるのだろうか?
香りによって引き起こされた憂愁。
雨音につつまれて/夏に向かう香りの中で時空の隙にはまり込む
http://d.hatena.ne.jp/myrtus77/20140527/p1
これは興味あります。英語にはあるのだろうか?
ネットの辞書を調べました。
「plaintive」と、「メランコリー」という言葉が引っかかってきました。
メランコリーは憂うつな、はればれしない落ち込んだ気分のこと、と辞書にあるました。
日本ではメランコリーというとなにか物悲しい感じがする言葉ですが、英語では?
使用例として、下記の文が見つかった。
I was more melancholy than ten Hamlets.
ハムレットが10人集まったより憂鬱=この上もなく憂うつだった.)
また、こんな雑学も仕入れた:
[後ラテン語←ギリシャ語melancholía (melas黒い+chole胆汁). 黒い胆汁が多いと憂うつになると信じられていた]
「plaintive」は哀しい、哀調を帯びたと訳されています。これは近いかもしれないと思って、英英辞書を調べました。
そうしたら、
They lay on the sand, listening to the plaintive cry of the seagulls.
(彼らは砂の上に寝転んで、かもめの「ものかなしい」鳴き声を聞いていた。)という例文がありました。
ふむふむ、、「plaintive」は、かなり近いかなーとおもいましたが、もしかしたら、この主人公の「彼ら」は悲しいことがあって、その悲しさを抱えていたから、カモメの声がなんとももの悲しく聞こえたのかも知れません。
この場合は原因があって、カモメの声をきっかけに悲しさを覚えた。。ということになります。
それとも、かもめの声を聞いていたら、そこはかとなく、ものかなしさを覚えたのでしょうか?
そうなら、これこそ「理由なくなにか悲しい、哀しい」という感情のひとつになるのではないでしょうか。
これは言葉のニュアンスのわかるネイティブに聞いたほうがいいと思っていると、家人がふらっと通りかかりました。ちょうどいい!! つかまえて聞きました。
彼はロックンロールの本格的コレクターだから、ロックやポップスの歌詞はよく知っています。
「ものがなしい」などという感情はもってはいなさそうだけど、的確な知識だけは提供してくれるでしょう。
まず、メランコリーについて聞いてみた。彼はメランコリーは「sad」だと。
「plaintive」については理由があってものがなしい意味もあるし、理由なくものがなしいの意味も、両方あるとのこと。
なるほど、ということは「ものがなしい」に近い英訳は「plaintive」といってもまずまずいいのではないでしょうか。
こうして英訳で考えていくと私の中ではっきりしてきたことがあります。
ものがなしい、わけもなくかなしい、そこはかとなくかなしい、なんとなく悲しいが、自分の中から発っしてもの悲しい気分になるのか、それとも
身の周りの自然などが自分に影響を与えて、物悲しくさせられるのか?
私の考えでしかありませんが、これは、後者だと思います。
自然の移り変わりから不確かさや、不安定さを感じて「ものがなしく」なるのではないだろうか?
日本人の美意識についてよく言われることは;
日本人は一瞬にしてなくなる美を限りなく愛すると。
例えば、桜。一瞬にして散ってしまう。
又、花火も。一瞬にして消えてしまう。
蜉蝣、蝉の声、月、風、鳥の声、
一瞬にしてなくなるからこそ、愛でる。
そして諸行は無常だ。
だから、美しいものは哀しい、とか、とか、歌も生まれる。
かくかくしかじか、一日の中でそういうものを肌で感じてなんとなくものがなしくなることが私にはあります。
だから、日本人はランボーの「永遠」が好きなのだと思うのです。
とうとう見つかったよ。
なにがさ? 永遠というもの。
没陽といっしょに、
去(い)ってしまった海のことだ。
myrtus77さん、わざわざ私の考えなどをお聞きくださってありがとうございます。
コメントで書き始めたのですが、長くなってしまったので、ここに一本立てました。