震災生活で見つけた一粒、一粒の優しさ

福島民報http://www.47news.jp/localnews/hukushima/
あぶくま抄(4月22日)  

 いわき市を中心とする地域は今月11、12日に、震度6級の余震に見舞われた。水道などが復旧しつつあった矢先、本震に匹敵する揺れを市民はまたも体験した。
 それでも市民は冷静さと秩序を失わなかった。雨の夜、停電のため道路の信号機が点灯せずに大渋滞となった交差点。真っ暗になった市街地に雷鳴がとどろき、誰もが急いでいたが、「われ先に」とクラクションを鳴らす車はなかった。4方向から頭を突き合わせた車は「あうんの呼吸」で交差点をすり抜けた。
 助け合う心にも「ひび」は入らなかった。平のアパートの持ち主は懐中電灯全てを子どものいる家庭に提供し、自分は茶わんにろうそくを立てた。再開した給水所でも、市民は蛇口を譲り合った。誤って水をかけられても「いいから、いいから」と笑って受け流す。
 トイレのタンクに入れる水を確保しようと、夜の夏井川に足を運んだ。みじめな思いを胸にバケツに水をくんでいると、手元が突然明るくなった。軽トラックに乗った高齢の夫妻がヘッドライトで照らしてくれた。震災生活で見つけた一粒、一粒の優しさ。それらは大きな活力を生み出し、復興への歩みを後押しするはずだ。