アフリカン・アメリカンが差別する側になることもある。
まだ民主党が予備選挙をしていた頃の話。
アフリカン・アメリカンが大多数の地域の高校でインタビューが行われた。「オバマをどう思うか?」と。
黒人の男子生徒A:「自分ももっと勉強をしようと思った。」
黒人の女子生徒B:「自分が大統領になろうとは考えたこともなかった。でもオバマはその可能性を与えてくれた。どんな可能性もあることを教えてくれた。」
白人男子生徒C:「オバマは人種差別主義者だと思う。」
インタビュアー:「どうしてそう思うのか?」
白人男子生徒C:「おとうさんもそう言っているし、ボクもそう思う。」
この白人生徒はクラスでたった一人の白人だ。
たぶん、日ごろクラスメートに「ホワイト・ボーイ」と、いじめられてきたのではないか? 彼にとっては「自分は人種差別されている」と日ごろ感じてきたのかもしれない。
こう推測する根拠には: 私たちの友人に同じような境遇で育った人(白人、男性,30代)がいて、周りは黒人ばかりの中で育った。学校でもかなりいじめられてきたようだ。だから、黒人のことをあまり良く評価していない。中にはいい奴もいたけど、一部の人以外ははっきり言って嫌いだそうだ。
そんな事から推測しているわけだが、この人、一人の体験だけで判断してはいけないとは思っているものの、彼の体験もこれまた現実の一端ではある。
ただし、このインタビューを受けた白人の生徒は自分の意見がクラスメートの大多数の意見に反しているのにもかかわらず、皆の前で堂々と言える・・・ということは、違う意見を言ったという理由ではいじめられていないということだ(これも推測なのだが)と、思う次第。
そういう意味では先生も学校もしっかりしているのだろう。
余談だが、校長先生は黒人の男性、担任の先生は白人の男性であった。
少し前の話になるが、沖縄でアメリカ兵が中学生を暴行し殺害した事件があった。この犯人は黒人のアメリカ兵。始めて軍はこの犯人を日本の警察に引き渡し、日本の裁判にかけると決定した。
この犯人の母親と家族が「これは人種差別だ」といきまいて日本に乗り込んできた。テレビを見ながら、これにはウイザードおじさんも「日本でそんなこと言っても通用しないよ。日本はそういう国ではないのだから」って言っていた。
それは日本は立派な法治国家であり、治安がアメリカ以上に徹底されている上に、社会が成熟しているからアメリカのものさしで『がなりたてても』通用しない国だという意味である。
日本の関係者はインタビュアーを含め、丁寧に礼儀正しく同情をもって彼女に対処していたようだ。
この母親はアメリカに帰国の際「申し訳なかった。」と言って悄然と帰って行った。日本の人達は彼女に罵声をあげるでもなくあくまでも礼儀正しく送った。
この事件はこちらでも大きなニュースになったので、数人のアメリカ人(白人、中年、女性)からお見舞いの言葉をいただいた。
「恐ろしく残酷な事件。日本の人達はアメリカを憎んでいるのではないか?」という内容であった。
「ありがとう。それは大丈夫よ。極悪人はどこの社会にもいて、その少ない人々がアメリカを代表しているわけではないことも日本の人達はよくわかっているから」と答えた。「それを聞いて少し安心したが、なんともいえない気持ちだ」と皆申し分けなさそう語ってくれた。
たぶん・・・これも推測なのだが・・・この犯人の母親は、沖縄において自分の息子の残酷な犯罪の事実と、駐留軍が長年数々の蛮行を犯しても、それを軍法会議で処理してしまって、日本の司法から護ってきた・・・つまり、黒人も白人もヒスパニックもアメリカ軍が一体となって現地の日本人を差別してきた実体がわかったのではないか?
いつも差別される側に身を置いて、何かあると「人種差別」と叫んでそれが通ってきた。でも、そういうことは日本では起こらない。
日本の地で日本人が殺されたら当然犯人が何人であろうと日本の法律によって裁かれなければならないが、沖縄ではこれまで涙を飲んでアメリカのMPに引き渡してきたわけだ。何度も、何度も・・・。
アメリカ人の殺人者対日本人の犠牲者の関係で、アメリカは人種差別してきた側になる。
オバマ議員はどの人種にも肩入れせず、どの人種の利益の代表者でもない立場を打ち出してきた。ここに彼の明晰な頭脳と人柄があらわれていると思う。それがこれだけの人気を勝ち取ったのではないか?
もし彼が奴隷としてアメリカに連れて来られた人々の子孫、マジョリティーのアフリカン・アメリカンの中から出てきた人材だったとしたら、どうしてもアフリカン・アメリカンの利益を代表していると見られてしまったであろう。
一般的に言うと、普通のアメリカ人はおうおうにして国際感覚が乏しい。けっこう「井の中のかわず」。
オバマ議員のフェアーな視点。人種という狭い範囲で「井の中のかわず」的な見方を超越した考え方。それを裏付けるような国際的生い立ち。
ここに多くの人は大統領として期待を込めているのではないか?
そして、それは又保守派の最も責め易い点でもある。
「愛国心があるのか?」
「イスラム教徒なのではないか? ミドル・ネームがフセインだぞ。」
「夢のような言葉だけで、現実に即していない」などなど・・・