マサチューセッツ州で70年来の最大の洪水=苦難の中のジョーク

Mapple2006-05-16

写真:5/15、ローウエル(マサチューセッツ州)で水があふれる道路を船を漕ぐ住民
May 16, 2006 FOXNEWS.COM

マサチューセッツ州を含むニューイングランドにここ70年で最悪の大洪水が起こった。大雨が降り始めて5月16日現在で5日目。河川の水量は頂点に達し、受け入れるこの地区のダムの限界はもう少量しか残っていない。この週末の雨は特に激しく、ある地区では30センチ以上の降水量を記録した。各家々の地下室が浸水され、もし水が屋根の高さまで急上昇してしまったらもう手の施しようがないと排水作業にあったっている人々は心配顔である。消防士や救難隊員もボートで水に閉じ込められた約1000軒の各家々を巡回している。

ミット・ロムニー知事はABC放送の〔おはよう、アメリカ"Good Morning America."〕の番組の中で「私たちはこんなジョークを言っているんですよ。なんだか、旧約聖書ノアの箱船の話みたいだ、早速『つがい』の動物たちを集めようか...とね」と言っていた。

住民は5日間も閉じ込められてもううんざり。写真のようにボートを繰り出す人もいるし、マットレスを持ち出して「筏」と称して笑っている人もいる。

ニューハンプシャー州では600の道路が水で破壊されたり浸水したりの被害を受けた。メイン州では10以上の道路や橋が破壊された。ダムや湖が排水の役目を果たしている地区もあるが、災害の最も大きいマサチューセッツ州のメスーン(Methuen)では、当局がスピケット川ダムの決壊の可能性を想定して住民に呼びかけ、数百人が家を去り非難している。
水が引いた後には各家の修理の他、森林、畑、道路の破壊などの復旧を加えて莫大な損失がでるものと予想される。 FOXNEWS.COM より抜粋

ニューイングランドといったら冬は積雪で寒いが風光明媚、アメリカ建国時の古い建物を保存し観光地としても人気が高い。
マサチューセッツ州はボストンという大都会をひかえ、有名なMITという工科大学始め、ボストン大学、古くは若草物語でも登場するように教育レベルの高い所。
ニューハンプシャー州は「自由か、死か」という文字の入ったナンバープレートを入れた住民の車が今でも走る所。
バーモント州は「バーモントカレー」のバーモント。ここにストーという町がありニューヨーカーのスキー リゾートだが、人口より牛の数の方が多い。白と黒の斑の牛が飼われていて乳産業でも有名だ。ニューイングランドの典型的絵葉書、白い教会に緑が広がる風景はたいて、このストー周辺で撮影されている。今回の洪水はマサチューセッツが中心でバーモントには被害がなかったようだが。

東部というとカリフォルニアなど西海岸とは少し趣が違う。まして去年ハリケーンに襲われたニューオリンズ始め南部地方とも様々な面で違いがある。
同じ洪水でも、収入の違い、家の造りの違い、緊急時の個々の予備保存食料の違い等々。だいいちニューオリンズでは水が汚染されているからマットレスやボートで水を渡ることも難しい上に個人でボートを持つ人もいなかっただろう。

ニューイングランドでは多くの家が地下室をもち、冬に備えて食料、暖炉の薪、日用雑貨類を保存している。近くに川や湖があるのでレジャー用ボートを持つ家庭も多い。家の造りは二階屋もかなりあるし、ニューオリンズのように簡素な平屋がぎっしり並ぶ町並みではないし、被災者のほとんどが生活保護を受けているような状況ではない。

そういう所では最悪の状態でもジョークが出るんだなーと感心した。もともと苦難に直面しても笑いで励ましあってのりきってきた気風があるのかもしれない。しかし、アフリカン アメリカンだってジョークは得意でどのグループよりジョークが生活に染み込んでいる。笑いの中から苦しみをのりきってきたはずだが、ハリケーンカトリーナの時にジョークは出なかった。伝えられてきたのは政府への批判と人種差別だ!人種差別だ!という怒声だけであった。

しかし、待てよ。もしハリケーンの被害の最中にミット・ロムニー知事のように「なんだか、旧約聖書ノアの箱船の話みたいだ、早速『つがい』の動物たちを集めようか...とね」などというジョークを誰かが言ったらどうだったであろうか。きっと蜂の巣をつついたように人々は騒ぎ、マスコミは宗教の論議から始まって、不謹慎だとか、これまた人種問題にまでことは及んだかもしれない。

この違いはいったい何なのだろうか? 貧しさと豊かさの違いが根底にあるような気がする。貧しいには貧しいだけの歴史、教育、衣食住の環境、仕事の機会、その種類、収入など、様々な問題が個々の心のあり方に影響を与えていると思う。短期間では解決できないものばかりだ。

ベイ エリアで知るアフリカン アメリカンは広い心、温かさ、楽しさが備わっている。ジョークも上手い。こういう彼らの特質が充分発揮できるような環境をすべてのアフリカン アメリカンが享受できる日がいつかくるのだろうか。

と同時に思うのが、きっとニューオリンズの被災者の間では洒脱なジョークが飛び交っていたのではないかと。ただそれが伝えられなかっただけではなかったか。疑問としても残るのはなぜ伝えられなかったか..という点である。

ニューイングランドの水害から、ニューオリンズの被災者へと思いは飛んでしまったが、ニューイングランドの一日も早い復旧を祈る。