ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」

WHAT A WONDERFUL WORLD
(George Weiss / Bob Thiele)

I see skies of blue
and clouds of white
The bright blessed day,
the dark sacred night
And I think to myself,
what a wonderful world

写真:ルイ・アームストロングと妻のルシール、1943年
http://www.louisarmstronghouse.org/index.html

イラク戦争、その反対デモ、イラン問題のニュースを車の中で聞いていたが、気持ちが重くなってきて番組を変えたら、サッチモことルイ・アームストロングの歌が流れてきた。あのしゃがれ声で「What A Wonderful World」この素晴らしき世界を歌っている。ちょうど、最後のWhat A Wonderful Worldのところだった。
What A...で、ちょっと一呼吸入れ...Wonderfulとていねいに、ゆっくりと言い聞かせるように歌い、そしてWorld...と、かるーく、ほそーく消えるように歌い終えた。


ニューオーリンズの極貧家庭に生まれ矯正施設でコルネットを学び、ジャズ・ミュージシャンへと成長していく。人種差別が公然と行われてきた時代。白いハンカチで汗を拭きいつも笑顔で演奏し歌うジャズアーティストは、黒人として卑屈だという批判を受けたこともあったそうだ。


キング・オリバーのバンドのメンバーを経て自分のバンド、ホット・ファイブを作り「Muskrat Ramble」でトップ・テン・ヒット。メイ・エイリックスと初めてデュエットし30年代から60年代と長い間ヒットを出し続けてきた。まさに20世紀のジャズの王様。「聖者の行進」「ハロー ドーリー」「バラ色の人生」数々の作品を残し「What A Wonderful World」も大ヒットした。


当時のアメリカ人はただうっとりと、Oh, Yes! What A Wonderful World...とハニーと肩よせあって、偉大な白人の国アメリカが他の国を、他の人種を踏みにじっているかもしれないなどとは微塵も思わず、歌に酔いしれていた人もたくさんいたことだろう。


サッチモが「What A Wonderful World」と歌う時、そんなことをうたっているのではない、もっと深いメッセージを送ってくれたと思う。彼の道のりはけっして平坦なものではなかったはずだ。いやなことも頭にくることも、たくさんあったと思う。それにハンサムでもなかったし・・それでもWhat A Wonderful World...と歌うのだ。


どういう時にかはわからないが、青空を見上げてか、星空を見上げてか、「それでも悪いことばかりではないさ。すてたもんでもないさ、この世は・・」と、つぶやく・・・そんな経験をしたに違いない。
いろいろあるけど、何もかもひっくるめて、なんてすばらしいんだ。
そうだよ、君だって、貴女だって、何てすばらしいんだ。すばらしいんだよ、この世は・・・と歌ってるのだ、きっと。
だから彼のMusicは時代を越えて、痛みを知った人々の心を捉えてはなさないのだと思う。


アフリカン アメリカンの歌う、「私には家もない。お金もない。教育もない。恋人もない...とないないづくしで始まり、でも、私には手がある。目がある。足がある、心臓がある。肝臓もある...」という歌がある。
What A Wonderful World..の中でひときわ心をこめて「..Wonderful..」と歌うサッチモの声の底から「Igotta hands,..Igotta liver...」の歌が浮かびあがってきた。


ルイ・アームストロング(ジャズ): 1901/08/04〜1971/07/06。本名、ルイ・ダニエル・アームストロングLouis Daniel Armstrong。トランペット、コルネット奏者、シンガー。


ルイ・アームストロングの家
ニューヨークのルイ・アームストロング夫妻の家は当時のまま残され、公開されている。
Louis Armstrong House
34-56 107th Street,Corona, NY 11368
(718) 478-8274 (718) 478-8299 fax

開館時間:火曜日から金曜日 10 am-5 pm 土曜日&日曜日 12 noon-5 pm
一時間毎に 40分間のツアーあり。最終ツアーは4時
入館料: 8ドル(シニアー 6ドル)