DNAで父親判定するビジネス

「父親が誰だか分からない。こういう赤ちゃんをおもちのかたに耳よりなニュース。
当社はDNA鑑定により可能性のある男性の中から父親を特定することができます。お電話ください。1-800-XXX-YYYY  お電話ください。1-800-XXX-YYYY』というコマーシャルをとりあげたのは910KNEWの朝番組のホスト、グレン ベック(Glenn Beck)。彼は人生経験豊富な40歳の男性キャスターである。
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「自分の妻が浮気をしてそれがわかったとする。反省の色がまったくない。さて、どうするか? 私なら即刻離婚する。
では次に妻が浮気をして、ほんとうに悪かったと反省している。この場合は許して妻との関係改善の努力をする。ところが2ヶ月位して妻が妊娠していた。子供は自分の子かもしれないし、妻の浮気の相手の子かもしれない。
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こういう時どうするかだ。
もしどちらの子かわからないままなら、その子を見る度に苦しい思いをしなければならないだろう。
そこでこれだ! 
『当社はDNA鑑定により可能性のある男性の中から父親を特定することができます。お電話ください。1-800-XXX-YYYY
お電話ください。1-800-XXX-YYYY』
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次に、その子が自分の子ではないと分かったらどうするか?
自分は悪い男かもしれない。大きな心をもてない男なのだと思う。
自分の子でないのなら自分はその子は里子に出す。
子供を見るたびに妻の浮気を思い出す。それはつらいことだ。
やっぱり自分なら、その子は里子に出す。
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もし、自分の子だったらそれはちゃんと自分の手元で育てる。
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今、電話がはいってます。もしもし......
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<女性>
実は最近、養子をもらおうとおもっているのですが、
それは私の甥のガールフレンドの妹の子なのです。
主人と話してひきとろうという話になっているのですが...
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▲ちょ、ちょっと待って。えーと、あなたの甥が付き合っていた女性がいて、その女性の妹に子供ができたということですね。甥とその妹の関係はあるのですか?
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<女性>
はい、関係をもったということです。
その妹は甥のほかにも2〜3人付き合っている男性がいて、甥の子であるという確証はないのですが、甥の子なら血が繋がっているから育てたいと思っているのです。
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▲もし、その子が甥の子供でなくてもやはり育てたいですか?
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<女性>
うーん、それはできないですね。
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▲ほらほらほら、こういう時こそ......
『当社はDNA鑑定により可能性のある男性の中から父親を特定することができます。お電話ください。1-800-XXX-YYYY
お電話ください。1-800-XXX-YYYY』
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このラジオを聴いて戸惑ってしまった。DNA鑑定により父親を特定するビジネスが生まれ、それがビジネスとして成り立つことに時代を感じると共に考えさせられてしまったのだ。
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昔なら、父親のこういう疑いが尾を引いて、悲惨な父と子の摩擦がおこったかも知れないし、たとえ父親が他人でも、自分の子として育てて「昇華された父性愛」が存在したかもしれない。
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DNA鑑定によってこういう葛藤はしないですむ。すべてがクリアーになる。はっきりとして問題がすくなくなり、科学の力で親子関係に幸せをもたらすことができる。
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そうなのだが、ほんとうにそうなのであろうか?
そもそも誰が父親かわからないような状況を作ることは、生まれる子供の運命に恐ろしい原因を作ってしまうかもしれない。そういう「恐れ」がなくなってしまうのではないだろうか? 「天に向かって恐れる」というか、「おてんとさまに顔向けができない」というか、そういう感覚が麻痺してしまわないだろうか?
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「恐れ」がなくなれば、関係をもつことに「重み」はなくなる。
なにもかも「命を賭けなくても」テクノロジーが安心感と悩みのソリューションを与えてくれるわけだ。「生きること」がそれほど危険でなくなった今、こんなことを考えるのはもう古いのだろうか?